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働き方改革時代を生き残るために考えるべきこと ~ムチで職場は良くなるか~

厚生労働省が「ブラック企業リスト」を公表

ちょうど一週間前の 2017 年 5 月 10 日、厚生労働省が「ブラック企業リスト」を公表したと話題になった。

リストの正式名称は「労働基準関係法令違反に係る公表事案」[PDF](厚生労働省労働基準局監督課)。労働基準関係法令違反の疑いで送検された事案や都道府県労働局長等による指導が行われた事案を対象としており、今後は毎月更新される予定だという。

 

ところで、ご覧になった方はお気付きになられたかと思うが、このリストの事案概要にハラスメントは含まれていない。かの大手広告代理店の事案も含まれており、報道では相当なパワハラの存在についても言及されていたが、このリストでは触れられていない。これは、労働基準監督署は、サービス残業の強要や、過度の長時間労働、残業代の不払いなど、労働基準法の違反を取り締まることに由来し、ハラスメントはその対象ではないためだ。しかし、だからとハラスメントが許されるわけではなく、刑法や民法により責任を問われうることを明言しておきたい。

より外から見えにくいハラスメントが扱われていないこともあり、このリストについては賛否両論あったようだが、まずは公表されただけでも前進だと評価したい。労働者は雇用者に比べると立場が弱いため、こういったリストで応募時に「ブラック企業」を避けることができるのは大きなメリットだろう。

 

今年 3 月には「働き方改革実行計画」[PDF](働き方改革実現会議 ) が決定され、労働環境に対する目は官民問わず厳しくなっている。従業員に圧力をかけて限界以上に働かせることに頼った事業モデルでは、今後通用しなくなることは間違いない。

パワハラと生産性

とは言うものの、パワー ハラスメントが問題になるとき、必ずと言っていいほど「ミスを怒るのは当然」「昔は当たり前だった」「ちょっと言われたぐらいでけしからん」などといった反論が出てくる。確かに昔はそのような考え方も多かったのかもしれないが、果たして部下にきつく当たることで期待する効果は得られるのだろうか?

 

これに関して興味深い記事を見かけたので紹介したい。

礼儀正しさは職場にプラスの効果 従業員に敬意を払う職場環境は生産性や創造性を向上させる
(WSJ, THE WALL STREET JOURNAL)
http://jp.wsj.com/articles/SB12408226390103943756704582455700160087784
What Google Learned From Its Quest to Build the Perfect Team
(The New York Times)
https://www.nytimes.com/2016/02/28/magazine/what-google-learned-from-its-quest-to-build-the-perfect-team.html [英語]

WSJ の記事で取り上げられている実験では、被験者にアナグラム・ワードパズルとブレーンストーミングの課題に取り組ませ、暴言が処理能力や創造性に与える影響を調べている。ここで注目すべきは、「暴言を吐かれた人」だけではなく「それを目撃した人」の成績も悪かったという点である。なんと暴言は当事者だけでなく周囲の生産性も低下させていたのである。

The New York Times の記事では、これも一時期話題になった Google 社の生産性向上計画「プロジェクト アリストテレス (Project Aristotle)」の研究について取り上げている。この研究結果で、「心理的安全性 (Psychological safety)」が生産性のキーの一つとされていたことも、前述の実験の結果と一致する。自らの人格に対して攻撃を受けている状態は「心理的安全性」とは程遠い。

3種の動物

暴言は攻撃の一種であるが、人間は攻撃を受けると本能的に様々な防衛反応をするものである。ここではその中から代表的な3つを動物に例えて紹介しよう。

① ウサギ ~脱兎の如く (逃避)

襲われたら逃げるというのはあらゆる生物に共通する基本の反応であり、人間も例外ではない。あなたが声を荒げたとき、相手はとにかくその場をしのごうと必死になり、表面的な受け答えしかできなくなってしまうだろう。

② カエル ~蛇に睨まれた蛙 (思考停止)

天敵を前にした蛙が動かないのは恐怖のためなのかは諸説あるようだが、人間でも「足がすくむ」という表現があるように動けなくなってしまうことがある。身体でさえそうなのだから脳でも同じ現象が起きる。そうなると相手はもはや何も考えられず、あなたが何を言ってもまったく耳に入らない。また、学習性無気力という現象があり、やることなすことすべてがうまくいかず罰を受け続けていると、「何をやっても無駄だ」という心理状態に陥り、次第に主体的な行動を取れなくなってしまう。

③ ネズミ ~窮鼠猫を噛む (反撃)

絶体絶命のときにやぶれかぶれの反撃を試みるというのも防衛反応の一種である。暴言に対して殴りかかってくることは流石に少ないだろうが、その心中はどうだろうか? あなたへの不満が募り、いつしかあなたが関わるすべてに対して密かに抵抗するようになるかもしれない。

 

いかがだろう。

あなたは自らの部下をこのような状態に追い込みたいと思うだろうか? このような状態の人間と同じチームで生産的な活動ができるだろうか? あなたが会社のために考えることのできるリーダーなら、答えは否のはずだ。

悪いことは悪い、良いことは良い

しかしながら、すべての部下があなたの思う通りに動いてくれるということはありえない。改めさせたい部分は少なからずあるだろう。

怒るのがいけないなら、どうすればいいだろうか? ムチが使えないなら・・・そう、アメを使えばいいのである。

 

アメリカの心理学者 B.F. Skinner の研究によると、悪いことを叱るという行為は、その対象とした行動の改善にはほとんど効果がない。それどころか、繰り返す度に罰としての効果は低減し、しまいには「叱られなければ何をやってもいい」という考えに陥り、却って逆効果になってしまうと言われている。

それよりも、良いことをしたときに褒める方がよほど効果が出る。部下の行動には、褒められる点も少なからずあるだろう。それを自主的に行ったときにすかさず褒めるのだ。そうすることで、徐々にあなたの望む行動が増えていくはずだ。

 

誤りを指摘する際には、次の事項を心掛けてほしい。

  • 行為を問題とし、人格攻撃はしない。
  • 解決・改善に向け、建設的な意見を述べる。
  • 問題が改められたなら、しっかり褒める。
  • つい怒ってしまうリーダーのあなたへ

    カッとなってしまうのを抑えるのは難しい。なかなか思うとおりに動いてくれない部下を指導するのには忍耐がいる。だが、その難しいことを行うのがリーダーたる者の責任ではないだろうか。

    あなたには自らの感情よりも優先すべきものがある。チーム全体の成果だ。あなたには自らが率いるチームの生産性を向上する義務がある。

    今までは方法を知らなかっただけかもしれない。しかし、この記事でそのヒントに触れたからには、もう知らないという言い訳は通用しない。ぜひ、あなたの責務を果たして欲しい。それこそ、あなたがその立場にいる理由なのだから。

    あなたにはその地位に就けただけの能力がある。その能力を信じて自らを変えていって欲しい。大丈夫、あなたにならきっとできる。

     

    (ヘルプライン事業部)

     

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