コラム
HOME  > コラム  > 事業場内産業保健スタッフについて (1) ~衛生委員会と衛生責任者~

事業場内産業保健スタッフについて (1) ~衛生委員会と衛生責任者~

これから2回に分けて、これまでお話したセルフケア・ラインケアの統括とメンタルヘルスケアで中心的な役割を果たす事業場内産業保健スタッフに対するケアについて解説いたします。事業場内産業保健スタッフには産業医や衛生責任者などが該当し、その方々が中心となって衛生委員会が組織・運営されます。今回は衛生委員会と衛生管理者についてお話いたします。

衛生委員会について

衛生委員会とは、労働安全衛生法第十八条に基づき、常時50人以上の労働者を使用する事業場において業種を問わず設置されるように規定されている組織です。これは労働安全衛生法第一条にある目的(「①職場における労働者の安全と健康を確保する」「②快適な職場環境の形成を促進する」)を果たすために設置される組織の一つで、衛生委員会が “健康”を確保する目的で設置されるのと同様に、“安全”の確保を目的とする安全委員会があります(労働安全衛生法第十七条)。安全委員会も衛生委員会と同様に50人以上の事業場にその設立を定められている組織ですが、業種や労働者数によって設置義務の条件が付されています(表1)。

[表1] 安全委員会又は衛生委員会を設置しなければならない事業場
安全委員会 次のいずれかに該当する事業場。
  1. 常時使用する労働者が50人以上の事業場で、次の業種に該当するもの
    林業、鉱業、建設業、製造業の一部の業種(木材・木製品製造業、化学工業、鉄鋼業、金属製品製造業、輸送用機械器具製造業)、運送業の一部の業種(道路貨物運送業、港湾運送業)、自動車整備業、機械修理業、清掃業
  2. 常時使用する労働者が100人以上の事業場で、次の業種に該当するもの
    製造業のうち 1. 以外の業種、運送業のうち 1. 以外の業種、電気業、ガス業、熱供給業、水道業、通信業、各種商品卸売業・小売業、家具・建具・じゅう器等卸売業・小売業、燃料小売業、旅館業、ゴルフ場業
衛生委員会 常時使用する労働者が50人以上の事業場(全業種)
安全委員会及び衛生委員会の両方を設けなければならないときは、それぞれの委員会の設置に代えて、安全衛生委員会を設置することができます。

次に衛生委員会の委員構成についてお話します(表2)。表内の*印の者は事業者が指名することとされていますが、このうちの半数は労働者の過半数で組織される労働組合(過半数で組織する労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者)の推薦に基づいて指名しなければならないと規定されています。

[表2] 衛生委員会と安全委員会の委員構成
衛生委員会 安全委員会
統括安全衛生管理者または事業の実施を統括するもの1名 統括安全衛生管理者または事業の実施を統括するもの1名
衛生管理者* 安全管理者*
産業医
労働者(衛生に関する経験を有するもの)* 労働者(安全に関する経験を有するもの)*

具体的な衛生委員会の構成を(図1)に示します。この図からもわかるように、衛生管理者、産業医は事業場側のメンバーとなります。委員長を除く委員は事業場側・労働者側からそれぞれ半数ずつの構成になるため、最小構成委員数は5名となります。事業場の規模によって衛生管理者の人数を増やすことが法律で定められており(後述)、それに伴って労働者側の委員も増やす必要があります。また職場内の部署数に合わせて委員を増員するなど、柔軟に構成できます。

安全委員会と衛生委員会は統合された一つの委員会(安全衛生委員会)として設立することも可能です。その場合は、安全委員会の議長と衛生委員会の議長は、事業場の責任者(たとえば人事部長、支店長、工場長)などが務めることになり、統括安全衛生責任者という名称で呼ばれることになります。安全委員会と衛生委員会は(表3)に示すように調査・審議の内容が異なりますが、一方で「①毎月1回以上の開催」「②委員会における議事概要の労働者への周知」「③委員会での議事における重要な記録の保存(3年間)」が定められている点が共通しており、これが統合可能である根拠となっています。

[表3] 衛生委員会と安全委員会における調査審議事項
衛生委員会 安全委員会
1) 衛生に関する規程の作成 1) 安全に関する規程の作成
2) 衛生に関する計画作成、実施、評価および改善に関すること 2) 危険性または有害性等の調査、結果、それによる措置のうち安全に関すること
3) 衛生教育の実施計画作成 3) 安全に関する計画、実施、評価、および改善
4) 定期健康診断の結果と対策 4) 安全教育の実施計画作成
5) 長時間にわたる労働による労働者の健康障害防止を図るための対策樹立
6) 労働者の精神的健康の保持増進を図るための対策樹立

衛生管理者について

衛生管理者は1966年の旧労働安全衛生規則改正に伴って創設されたもので、1972年の労働安全衛生法、新・労働安全衛生規則、衛生管理者規程の制定により法的な位置づけや職務が明確にされました。またこのときから免許試験制度や受験資格なども規定され、その後幾度かの変更を経て、1989年に現行のような第一種・第二種の区分がなされました。

[表4] 事業場の規模と衛生管理者数
事業場の規模(常時労働者数) 衛生管理者数
502001
2015002
5011,0003
1,0012,0004
2,0013,0005
3,0006

衛生管理者は労働安全衛生法第十二条で、業種に関わらず常時50人以上の労働者を使用する事業場にて選任が義務づけられています。その選任は事由が生じてから14日以内に行われ、所轄労働基準監督署に届け出ることが規定されています。また、(表4)に示したとおり、事業場の規模によって衛生管理者の人数が決められております。加えて「①業種にかかわらず常時1000人を超える労働者を使用する事業場」「②常時500人を超える労働者を使用する事業場で、坑内労働または一定の有害な業務に常時30人以上の労働者を従事させるもの」については衛生管理者のうち1人を専任の衛生管理者にすること、さらに「②において、その30人以上がX線等の有害放射線さらされる業務や鉛などの有害物を発散させる場所における業務に従事する事業場」では、衛生管理者のうち1人は衛生工学衛生管理者免許所有者から選任することとされています。

衛生管理者は免許制であり、「大学(短期大学)または高等専門学校を卒業し、1年以上労働衛生の実務に従事した者」「高等学校または中等教育学校を卒業し3年以上労働衛生実務に従事した者」「10年以上労働衛生の実務に従事した者」などといった受験資格が定められています。資格は第一種と第二種に分かれており、第一種の試験には「労働衛生および関係法令それぞれにおける有害業務に係わるもの」がありますが、これは第二種にはありません。従って第一種は第二種の上位免許の位置づけとなりますが、必ずしも第二種から順番に取得する必要はありません。

衛生工学衛生管理者は、東京と大阪の安全衛生教育センターにおいて定期的に実施される衛生工学衛生管理者に係わる講習を受講し、居住地の都道府県労働局に申請することで認定されます。ただし、この講習を受講するには上記の衛生管理第一種資格者や理工系の大学卒業者など、一定の条件を満たしていなければなりません。(表5)に各業種における衛生管理者専任有資格者を示します。

[表5] 各業種における衛生管理者選任有資格者
業種 免許等保有者
農林水産業・鉱業・建設業・製造業(物の加工業を含む)・電気業・ガス業・水道業・熱供給業・運送業・自動車整備業・機械修理業・医療業および清掃業 第一種衛生管理者免許もしくは衛生工学衛生管理者免許を有するもの・医師・歯科医師・労働衛生コンサルタントなど
その他の業種 第一種衛生管理者免許、第二種衛生管理者免許もしくは衛生工学衛生管理者免許を有するもの・医師・歯科医師・労働衛生コンサルタントなど

衛生管理者の職務には「①作業環境・作業条件・施設などの衛生上の改善」「②労働者の健康保持に必要な業務(健康診断・教育・相談など)」「③労働衛生統計の作成」「④衛生日誌の記載と管理」「⑤定期職場巡視と労働者健康障害防止措置」などがあり、この中にストレスチェックを含むメンタルヘルスケアの人選や管理も含まれています。

 

以上、衛生委員会と衛生管理者についてその概要をお話し致しました。次回は事業場内産業保健スタッフについて (2) として、これらのスタッフのメンタルヘルスケアにおける具体的な役割や、スタッフに対するケアなどについてご紹介したいと思います。

(田浦内科クリニック 院長 杉山 厚 [執筆者紹介])

 

弊社提供サービスのご案内

ディー・クエストは、企業リスク総合コンサルティング会社として、企業経営・組織運営で発生しうるリスクに対応した、次のようなサービスを提供しております。

労働安全衛生法のストレスチェックをお手頃価格で支援する「メンタルポート ストレスチェックサービス」
https://mentalport.jp/
貴組織の従業員からの通報を受け付けて報告する「第三者通報窓口サービス」
https://www.d-quest.co.jp/helpline/
反社会的勢力・不適切経歴者の関与を確認する「反社チェック サービス」
https://www.d-quest.co.jp/intelligence/anti-social-forces-check-service/

これらのサービスにご関心・ご興味がございましたら、ぜひお問い合わせください。

「メンタルポートSM」ストレスチェックサービスの
お問い合せ・資料のご請求・各種ご相談ついて、
お気軽にお問い合わせください。