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ラインケアについて

はじめに

これまで2回にわたってメンタルヘルスについて、職場でのセルフケアをテーマにお話いたしました。これは労働者おのおのが行うべきストレスへの気づきと対処であり、ストレスチェックのみでは網羅しきれないメンタルヘルス不調の一次予防を補完しうるツールでした。

今回は職場のメンタルヘルス対策において、もう一つの要となるラインケアについてお話いたします。

ラインケアの定義

ラインケアは管理監督者(部長・課長等)が中心となって行う、労働者のメンタルヘルス不調を予防するための取り組みです。その主な内容は『労働者(部下)からの相談対応を行うこと』と『職場環境等の改善』の二つです。

管理監督者は、使用者である事業主から労働者である従業員に対して指揮・命令を行う権限が委譲されています。一方で労働契約法第5条において、「使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。」と定められているように、管理監督者には労働者の安全配慮義務も同時に課されています。メンタルヘルス領域においては、管理監督者が中心となった“ラインケア”によって安全配慮義務の遂行が行われることになります。

ラインケアの始まり~それは“いつもと違う”ことに気づくこと~

セルフケアでもそうでしたが、ラインケアも“気づき”から始まります。具体的には『遅刻や早退が増える』『残業や休日出勤が不釣り合いに増える』『無断出勤が増える』などの勤怠に関すること、『仕事の効率が突然悪化する』『職場での会話・報告・相談が少なくなる』といった仕事に関すること、そして『ミスや事故が目立つ』『表情や動作に活気がない』『不自然な言動が目立つ』『服装の乱れや不潔さが目立つ』などの行動に関することなどが挙げられます。ラインケアは労働者(部下)の健康状態把握のきっかけとして“いつもと違う”ことに管理監督者が気づくことから始まるのです。

ラインケアの重要なポイント~管理監督者と部下の話し合い~

管理監督者が部下の前項で挙げた変化に気づいたときは、まず話し合いをすることが必要となります。ここでのポイントは、相手(部下)の立場になって話を受け止め、背景に何らかの病気が存在する可能性にも配慮することです。

また、管理監督者は部下の仕事をある程度調整できる立場にいることから、部下との話し合いでは仕事に関するストレス要因の3つの側面を意識することも必要です。これは「①仕事の自由度」「②仕事の要求度」「③周囲からの支援」の3つを指しますが、一般的には『仕事の自由度が小さいほど』『仕事の要求度が大きいほど』そして『周囲からの支援が少ないほど』労働者は高ストレス状態に陥りやすいと言われています。

加えて、話の内容によっては、産業医といった専門家への相談を勧める必要が生じることもあります。もしも労働者が専門家への相談に抵抗を示す場合には、無理強いをせずに管理監督者自身が労働者の代わりに産業医や専門家に相談し、そこから得られたアドバイスに従って労働者に説明や対応を行うことも可能です。その際は、管理監督者が知り得た部下の情報については個人情報保護の観点から、それらの収集・管理・使用には本人の同意を得なければならないということに注意する必要があります。管理監督者が労働者の代理として専門家に相談する場合には、上記のことについて予め労働者に同意を求めておく必要があります。

仕事場における“上司”と“部下”の関係性は非常にストレスを生みやすいものです。“上司”にあたる管理監督者は、自分が部下に出す指揮・命令によって部下が「自分の行動を自分で決定できないことにストレスを感じる」可能性の認識が必要です。ですから、管理監督者と“いつもと違う”労働者の話し合いの中で、このようなところに原因があると判断された場合には、それを修正することでメンタルヘルス不調を未然に防ぐことが可能となる(すなわち一次予防が可能となる)こともあります。

職場環境の改善

ラインケアのもう一つの要となるのが職場環境の改善です。職場でのストレスの要因には職場環境が多大な影響を占めるため、ストレスを生みにくい、より良い職場環境を構築する努力が必要です。

(1)職場環境におけるストレス要因

職場環境におけるストレス要因を挙げると「①仕事の負荷や自由度」「②作業環境(温度・湿度・照明・騒音など)」「③作業方法(作業スペース・作業姿勢・身体(目・鼻・耳などの感覚器を含む)負荷)」「④人間関係」「⑤組織形態(指揮命令系統・責任や権限の仕組みなど)」があります。一般にストレスを生みやすいと考えられている④や⑤といったソフト面に限らず、職種によっては②や③といったハード面がストレスの要因として重要になることもあり、職場環境の改善においては、まずこれらの項目ごとに、職場における問題点を具体的に挙げていくことが必要となります。

(2)職場環境改善の手順

職場環境の改善を実施するときは「①職場環境の評価」「②職場環境改善のための組織作り」「③改善計画の立案」「④対策の実施」「⑤改善効果の評価」の順で進め、必要に応じて組織の再編や改善計画の再立案に繋げていきます。これを繰り返し行うことで、より良い職場の実現を目指すことになります。ここで重要なことは、職場環境の改善に職場全体で取り組むことです。また、そこで強い味方となるのが衛生委員会です。ストレスチェック制度において現時点では努力目標である『集団分析』が職場において行われていれば、その結果を参考に衛生委員会と連携することで、より良い改善計画の立案が可能となります。

ラインケアのおける管理監督者の教育

今までお話してきた内容から、ラインケアの主役である管理監督者に対する教育が必須となることは容易に想像できるでしょう。また、セルフケアでは“個”が対象であったのに対して、ラインケアでは“組織”が対象であることから、教育内容も自ずとセルフケアを含めた上で、それに組織として必要なケアを網羅したものとなります。表にラインケアとセルフケアの教育内容の比較を示しました。ラインケアの教育では、項目1、2、12にメンタルヘルスの基本的事項を共通内容として持ち、さらに個人を対象としたセルフケアの教育内容を項目15に一括しております。そのうえで、項目5、8、10、13、14においてラインケアの中軸をなす内容を含めた教育を行うことになります。(個々の内容についての詳細は、過去のコラムをご覧ください。)

[表] ラインケアとセルフケアの教育研修内容
教育内容ラインケアセルフケア
1. メンタルヘルスケアに関する事業所方針
2. ストレスおよびメンタルヘルスケアに関する基礎知識
3. 職場でメンタルヘルスケアを行う意義
4. セルフケアの重要性および心の健康問題に対する正しい態度
5. 管理者の役割および心の健康問題に対する正しい態度
6. ストレスの気づき方
7. ストレスの予防、軽減およびストレスへの対処の方法
8. 職場環境等の評価および改善の方法
9. 自発的な相談の有用性
10. 労働者からの相談対応
11. 心の健康問題により休業した者の職場復帰への支援方法
12. 事業所内の相談先および事業場外資源に関する情報
13. 事業所内産業保健スタッフ等との連携およびこれに通じた事業場外資源との連携方法
14. 健康情報を含む労働者の個人情報の保護
15. セルフケアの方法
教育内容4. 6. 7. 9. をまとめた内容を含む。

まとめ

以上、ラインケアの概要についてお話しました。セルフケアとラインケアは現場におけるメンタルヘルス不調の一次予防の双頭をなします。特にラインケアについては組織の統括を担う管理監督者が中心となることもあり、個々の労働者のメンタルヘルス不調の予防だけにとどまらず職場環境の改善にも役立つことから、継続的な努力と持続可能なシステムの構築が望まれます。

(田浦内科クリニック 院長 杉山 厚 [執筆者紹介])

 

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